2021年度神戸大学理学部物理学科編入体験記
2021年7月に標記のような試験を受験し合格しました。
高専生に人気の編入先と比べるとこの学科の体験記は少ないと感じたので、これからこの試験を受ける人たちに向けて試験の所感などについて書いていこうと思います。
また自分は一浪しているので、その辺りについても軽く書こうと思います。
一応スペック
・学科順位は常に約40人中30台後半をさまよっており留年チキンレースをしていた
・高専卒業後、和歌山大学システム工学科に編入。ここでいわゆる仮面浪人を実施
・併願校:京都大学工学部物理工学科(不合格)
・TOEIC:580(英語が筆記試験だったため提出していない)
・TOEFLibt:58(京大の編入用、神戸大の編入には不要)
機会みたいなものだ
志望動機:大学で素粒子物理学について勉強したいと思っていたため、関西圏で理学部編入を受け入れている大学を探したところ神戸大学が最もレベルが高かった。
(ちなみに高専からの編入が可能な京都大学工学部にも物理工学科原子核工学コースという原子核について学べるところがあり、これはこれで興味があったので併願した)
(´・ω・`)(´・ω・`)
試験対策
試験2週間前までは過去問を眺めて出題傾向を探りつつ、「基礎物理学演習ⅠⅡ(サイエンス社)」の試験範囲と思われる箇所をひたすら回していました。過去問の感じからして、この本の例題がきちんと解けるくらいで試験は十分対応可能だと思います。
勉強を始めるタイミングや一日の勉強時間は正直個人差でしょうが、試験一か月前までに少なくとも力学と電磁気くらいはある程度理解できている状態にしていることが望ましいので、それに間に合うようにやるといいと思います。
なんで力学と電磁気かということですが、神戸大物理学科の物理は大問1が力学、2が電磁気、3が色々となっており、3についても半分くらいは電磁気や力学関係の範囲からの出題になっています(例えば電磁波や電気双極子などが出ていた)。
そのため、出るかも分からない上に配点も大したことのない流体や波動などに力を入れるより、力学と電磁気を固めた方が良いと思われます。
また、物理の例題の式変形などで頻繁に手が止まる場合は一度物理の勉強を止めて、先に数学の勉強をきちんとやった方が良いです(計算に気を取られると物理的な部分の理解が甘くなったりするので)。
試験2週間前あたりから、過去問5年分(神戸大のHPにリンクがある)の解答の作成をしていました。全問を解く必要は無いですが、全然調べてもいいので9割くらいは何かしら答えを書けるようにしたいところです。
また編入仲間や協力してもらえる教員がいるのであれば積極的に頼った方が良いです。自分の場合大学の教員には流石に聞きづらかったので、1年下の優秀な後輩に自分の解答が妥当か確認してもらったりしていました(ちなみにその後輩は無事阪大工に合格していて勝てませんになった)。
英語の対策は特にしていないです(京大編入用にTOEFLを受けた時の勉強くらい)。
手伝ってくれた後輩の編入体験記を以下に示す。
試験1日目(筆記試験)
試験は朝の10時からあるので、道に迷って受験できなくなったりしないように、一回は受験会場の下見をしておきましょう。
(自分は数年前に神戸大学で行われた情報系のイベントに参加し、大学の入り口が分からず遅刻したことがある)
服装については自分はスーツを着て行きましたが、半分くらいは私服だったし筆記に関しては普通に私服で良いと思う。
試験会場について
・会場は普通の教室、普通の教室の勉強机で試験を受ける(定期テストを受けているような気分になった)
・部屋に時計は無く、腕時計を持参する必要がある
・試験時間は2時間あるので試験前にトイレを済ませた方が良い。
・筆記試験の問題用紙は持ち帰り可
物理
時間は120分、問題の内容については各自確認してください。
体感の出来は8~9割くらい(大問1: 完答、大問2: 完答、大問3: 6~7割)
大問3はベクトルと電磁気は完答、熱力は(2)だけ書きました。
熱力をあまり勉強出来ておらず勿体ない失点をしてしまいましたが概ね出来てたと思います。
この試験で8割くらい取れれば大体安全圏かなと思います。8割と言うと大変そうに感じるかもしれませんが、各大問で最後の1,2問以外を合わせればいいだけなので割と何とかなります。
それと自分が試験中に使った小技を2つ紹介します。
まず一つ目は、「解答用紙を縦線で3つくらいに分けて解答を書く」です。こうすると無駄な空間が減らせますし、一見分からない問題が出てきて一旦飛ばすときにも空間を取りやすくなるのでおすすめです。
二つ目に試験途中で書いていた解法より適切な解法を思いついた場合、前のを消して同じ位置に新しいのを書くのではなく、古い解答の下に新しい解法を書いて、最後に古い方を消しましょう。
こうすることで、新しい解法が変だった場合に前のを書き直すという手間が省けます。
英語
時間は60分。大問が2つあり、大問1は一般的な長文問題、大問2は英作で、英語で願書を書くというものでした。体感の出来は長文が6割くらい、英作の方は一応書いたけど何とも言えない。。
長文は専門用語が多くTOEICなどしかやってない人からすると少し難しく感じるレベルだったのではと思います。自分はTOEFLのReading対策である程度慣れていたのでそこまでひるむことは無かったです。
まあ来年からはTOEICになりそうだけど。。
1次の結果発表
同日18:00に筆記試験の合格者が神戸大理学部のHP上に展示される。
物理の感触がだいぶ良かったのでこれで落ちたら終わりだろと思っていたが無事合格しており安心した。
直後に受験票を会場に置き忘れたことに気づき、急いで教務課に連絡した
(´゚д゚`)
面接に向けて
一次に受かった場合、翌日の対策をする必要があります。
神戸の面接は(少なくとも物理学科は)口頭試問ではないので、志望動機などのありきたりな質問の答えを考えておけばとりあえず大丈夫だと思います。少なくとも常識的な受け答えが出来ていれば、一次通ったのに面接態度が原因で落とされるということは起きないと思われます。
一方で、筆記の結果が合格ラインギリギリの受験生に対しては筆記の問題の解き直しをさせるというウワサがあり、面接で落ちる場合はおそらくこれが原因では無いかと考えられます。
そのため、面接の実施が決まったら絶対に筆記試験の解き直しをした方が良い。
試験二日目(面接)
教務課で置き忘れていた受験票を受け取り、待機室に向かった。
・待機室には理学部のすべての学科の受験生が集められ、学科別で受験番号順に面接室へ案内される。
・面接の時間は10分程度
・待ち時間はスマホの使用等特に制限は無かった。
面接の内容
聞かれたこと(順番は最初と最後以外バラバラです)
・志望理由
→素粒子物理学に興味があり、これについて勉強できる編入先を探したところ神戸大学がレベルの高さと通いやすさの点で優れていた。
・どの研究室に興味があるか
→粒子物理学の研究室(インターネットで見た)
・理論と実験ではどちらに興味があるか
→実験です。
・試験の出来について
→物理は結構できたが熱力学の部分は勉強不足であまり解けなかった。英語は住所を書く時の順番が分からず、また英作もあまり自信が無い。
・筆記の電磁気の問題は高専で扱ったことがあったのか
→はい。(この質問で自分の筆記の出来が結構良かったっぽいことを悟り、和みました)
・高専時代の卒研の内容は?
→卒研の内容を語った。
・最後に併願校と志望順位を教えて(合否には関係ないということを念押しされる)
第二志望:神戸大学理学部物理学科
面接はすごく普通な感じで、これで落ちてたらなんで落ちたのか聞きに行くわという感情でした。
結果
合格でした。
Summary
第一志望にしていた京大工学部には届きませんでしたが、同じくらい行きたいと思っていた神戸大の理学部物理学科には合格出来てとても良かったです。
自分の場合、現役の頃はそこまで興味の無かった電気電子系の学科を惰性で受けていたので、何なら現役で合格するよりも良い結果とすら感じています。
これから素粒子物理について学べることが楽しみで仕方ないです。
(/・ω・)/
高専生の編入浪人について
今のところ編入に全落ちした高専生は就職に切り替えるというのが主流になっていますが(同期にもいた)、自分は一浪するというのも全然アリだと思います。
実際自分の身の回りにも、高専で転学科や留年を経て1年遅れの編入をした人は何人も確認してますし、仮面浪人して二年次編入した人や、一度社会人になってから大学編入決めた先輩とかもいました。
このように浪人はじめ何年か遅れで編入を受ける人というのはあまり見ないだけで実はちらほらいます。なので、大学に未練があってもう一年頑張れるのであれば、変に周りを気にして就職を選ぶより絶対に一浪すべきだと自分は思います。
但し浪人するなら絶対に受かるところを1校は受けましょう、二連続で全落ちして二浪目突入or就職は多分地獄です。
仮面浪人して二年次編入した人の編入体験記です(自分もこれの予定だった…)。
使用した参考書
・「基礎物理学演習ⅠⅡ(サイエンス社)」(黄色いやつ)
・「電気磁気学(森北出版)」
・高専時代の授業プリントなど
以上になります。
長文にお付き合いいただきありがとうございました。
質問等あれば@NSD_collider (Twitter)まで
(試験対策で作成した過去問の解答とか持て余してるので欲しい人いたら是非)
(゚Д゚)ノ